映画日記『ビーチ・バム まじめに不真面目』

緊急事態宣言で東京の映画館は軒並み休業。今回、そんな中で光をさしてくれたのが、東京の西の大都会、立川にあるキノシネマ さん。高島屋の8階で3スクリーンだけ保持するこちらは、きっと面積に抵触しなかったのだろう。とはいえ、映画好きとしては本当に嬉しい限りだ。

 

独特な映画のラインナップが並ぶキノシネマ さんで、久しぶりの鑑賞に選んだのは、予告編を見て一目惚れしていた『ビーチ・バム まじめに不真面目』

百聞は一件に如かず。是非見て欲しい。

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過去に成功を納めた詩人が、今は楽しみ尽くして過ごしていまっせ!

ということがわかるけれど、あとはなんも方向性がわからないこの予告編。

でもまぁなぜか、私は主人公ムーンドッグの「詩の前戯」だけでグッと掴まれたわけだ。

 

「いつか俺は世界を飲み込む」

「その時は全員おっ死ねばいい」

 

心から意味不明だ。

でも彼のヒステリックな笑い声とともに披露されたこの詩は、我々に完全な不正解なんてないのだと、陰鬱とした空気を吹き飛ばしてくれるかのよう。

いや、まぁそれは実際後付けの感想で、こやつの詩は何度聞いてもどうも笑い転げてしまうのが正直な感想なわけだけれども。

 

このムーンドッグ。なんならちょっとした犯罪もしているし、あまりにも現実離れしすぎていて、とても感情移入なんて言葉は出てこない。

ましてや、周囲に助けがいなければ本当に働かないホームレスになってしまうだろうし、どうせ映画だから魅力的に見えるんでしょ?という声は聞こえてきそうだ。

それでも、誰かの目線を気にしてみたり、人の評価を気にして振舞わなければいけない世の中において、彼ほどにぶっとんだ自由奔放な生き方を見せつけられた方が、まじめ人間にはちょうど中和されて良いんじゃないかって思うほどだ。

だから私は声高らかに叫びたい!

全日本人よ、どうかビーチ・バムを見てくれ!

 

人生で初めてDVDを所有したいと思った作品。

この衝撃は、なかなかに大きいものだった。