ジョーブラックによろしく ※ネタバレあり

  1. 魅力的な人物たち
  2. 後悔なき人生を

 

自分がこの世から去る時、どんな姿が理想だろうか?

自分の命があとわずかだと知った時、一体どんな思いになるのかなんて

今の自分にはまだ想像だにできない。

できれば。できるならば。

この世への執着がたっぷりでギトギトな脂っこい豚骨ラーメンよりは、

一瞬のさわやかな味わいと共に過ぎ去っていく関西風きつねうどんに、私はなりたい。

そんな人生の終わりに馳せさせてくれる良作。

ジョーブラックと共に、素敵な人生の終わりを想像しましょう。

 

 

若きブラッド・ピットの美青年ぷり

ジョーブラックは死神である。アンソニーホプキンスに迫る死期に猶予を与えることを条件に、この世の世界を案内してもらうという、なんとも高慢な死神だ。

そして、選んだ体がブラッドピット。彼は冒頭からコーヒーショップでなんとも詩的でドラマチックな会話をヒロインと繰り広げるが、その後に交通事故に遭ってしまい、ジョーブラックの潜入先に選ばれたのだ。

このコーヒーショップでの会話劇が本当に魅力的で、このままの二人がどんなふうになっていくのか、気になって気になってしょうがなくなる。若い男女がお店で会話しているだけなのに、音楽や雰囲気も相まってこれがなんとも愛おしいのだ。

この冒頭をはじめ、本作はそんな人生の中にあるとある1ページをとてもきらびやかに映し出すのが素敵だ。ほんのささいな日常でも、とても荘厳な1シーンへと変えてしまう。

 

そして、何よりそこに花を添えているのは、若く美しいブラピ。

入れ替わる前の青年の爽やかさも、ジョーブラックとしての寡黙で知的で自信と迷いに満たされた態度も、どちらも選び難いほどの魅力であふれていた。

最初と最後で入れ替わる時に、これほどまでに互いの存在を愛おしくなるキャラクターも珍しい。

 

たっぷりと時間をかけた二人のシーン

本作は3時間とちょっと長め。その原因の一つは、おそらくジョーとスーザンの愛し合うシーンがじっくりゆっくりと描かれていたこともあるだろう。

私は、この映画ほど、見つめ合い語り合う二人の映像を、直近でじっくりと見たことはないと思う。

ありふれた愛情表現のシーンではなくて、本当に相手を知りたいと欲し、相手を思い合う。それを短い時間の中で表現する絶妙なシーンに感じた。

それでいて、相手のことを知らないが故の迷いや苦しみ、葛藤。

目線や表情でその変化が見事に混ざり合った状態を表していたと思う。

人生の大きな出会いと別れをぎゅぎゅっと凝縮したような。

別れがある故に、愛おしくなる。素敵なシーン。

 

去り際に、後悔を残さなかったビルの生き様

改めて。本作は、死神と令嬢の恋物語が主題ではない。

出会いと別れ、生と死。それ自体の素晴らしさを謳歌するものだった。

死期に気づいてなおビルが成し遂げたかったこと。

それは、大切な人への愛。

そして、大切な人が愛してくれているということを感じること。

本作ではビルのこれまでの生き方までは描いていないが、その最後を見るだけで、いかに素晴らしい生き様だったのかがわかる。

そう、最後の一幕。それが、その人の生き様を表すのではないだろうか。

花火を背に、ジョーと歩き出す彼の姿は、もはや何の後悔もなかった。

そう言える人生を送れるということ。

人生とは素晴らしいものだと彼とジョーは教えてくれる。