ブラックバード 家族が家族であるうちに ※ネタバレあり

 

 

ポスター画像

 

生と死。

コロナも相まって、より考えるきっかけは多くなった昨今ではあるが、

具体的に身近にあるわけではありませんでした。

だからこそ、映画を通して、「死」というものの一つの解釈を捉えるのは、

とても有意義なことのように思います。

 

「ブラックバード 家族が家族であるうちに」は、

病魔に襲われる中で安楽死を決意した主人公とその家族の交流を通して

死ぬことと生きることを考えさせてくれる素敵な作品でした。

 

 

 

家族みんなが知っている事実と、知らない事実と、

本作は、海が近く、自然豊かな一軒の豪邸に家族が集まるところから始まります。

安楽死を前にして、最後に家族で思い出を作ろうというようです。

視聴者としては、誰がその事実を知っているのかはわかりません。

最終的には、ほとんどみんな知っているということがわかるのですが、

これがゆっくりゆっくりとわかるところが一つまず旨いです。

 

考えてみれば当然ですよね。

(一部の人にとっては血は繋がってないが)家族が死を迎えようとしているのに、

自然に過ごす方が難しいし、気を遣ってギクシャクしたやりとりになります。

最初はそれが、家族同士の関係性によるものだけだと思っていました。

でも実際は違う。

死にゆく主人公に対して、それぞれが思う感情があって、それを出す人も出さない人も

それぞれなわけです。

 

ところが、家族みんなで過ごしている中で、だんだんと新しい事実の発見が。。

身近な人に近づく死によって、見えてくるもの。

それは、本当は、近しい家族の間でもずっとそこにあった、

それぞれにとっては気づいていた、本当に大きなわだかまりや苦悩。

それらが家族の間で解き放たれる。

 

表面的にみれば、それらは気持ちのよいものばかりではなかったかもしれません。

そして、死にゆく本人にとっては、心地よい最後の思い出のようにはならなかったかも。

 

それでも、きちんとそれぞれが最後に一歩前へ踏み出せたであろうラストは、

自分にとっての、生と死と、家族というものを見直させてくれました。

 

 

家族だからできること、できないこと

海外の家族って、親の前で子どものカップルがキスしたり、

勝手ながら、大胆で、飾らないイメージを持っていました。

そして、自分以外の個を尊重しつつも、自分の意見をしっかり持っている強さも。

 

でも、本作の家族は、結果的に自分がよく知っているような、

本当に大切なことは本音で語れないような、そんなよく知っている家族像だったようにも思います。

だって、本当に大切なことは、意外と友達の方が話しやすかったりするでしょう?

 

ほんの少しの勇気だけれども、その勇気がないから話せない。

一番の応援者だってわかっているのに、期待を裏切る心配とか、

いろんな感情が溢れ出して反発してしまう。

特に、ミア・ワシコウスカ演じるアンナは、そんな苦しさを代弁してくれました。

 

本作では登場人物は、家族の8人だけですが、

みんなが思い思いに特徴的で、きっとその誰かの視点で感情移入できるんじゃないか

と思いました。

 

そして、自分の家族を振り返り、自分の人生を振り返るいいきっかけになると思います。